はじめに
僕は読書をすのは移動中の電車が多いのですが、この本を読んでいるときに何度乗り過ごしたことか。最悪でした。プライベートな用事の時ならまだしも、仕事の時なんかはまたやってしまった。というか、やられたなって感じが強かったです。もちろん、折り返しの電車でも読みました。
それほどこの物語には恐ろしい魅力がありました。
しまいには、いつ爆発するのかよりも、犯人よりも、僕が一番気になったのは、
「今何駅」でした。
あらすじ
とある男が爆弾テロを予告した──しかも、自分から警察に捕まりに来た。
「東京のどこかに爆弾を仕掛けた」と語るその男は、
取り調べ室でやたら饒舌で、めちゃくちゃ話が長い。
しかも一向に爆弾の場所を言わない。
刑事たちは、時間との勝負の中で男の言葉を読み解こうとする。
でも、聞いても聞いても、彼の“本当の目的”が見えてこない。
果たして本当に爆弾はあるのか?
それとも、すべては言葉だけのゲームなのか?
そして読者は気づく。
この小説そのものが──爆弾だった。
ケニアのコーヒーが好き
「最近はケニア産のコーヒー豆にはまっているんです
焙煎を自分で行うわたしは、コーヒー豆を生豆の状態で買ってくるんです
そうです、いわゆる自家焙煎ってやつです
焙煎には小さな家庭用の焙煎機を使います
そこにコーヒー生豆を200gほど投入します
小さな金網のドラムがクルクルと回りながら小さな豆達に火でカロリーを与えていきます
縦型洗濯機を横向きに寝かせたような感じです
はじめは緑色で青かった豆から、水分が抜けていき、色味もだんだんと茶色っぽくなります
そして、爆ぜます
パチパチと音を立てながら、爆ぜます
これが1ハゼと言われる段階です
少し経つと、いったん落ち着きます
このくらいのタイミングで終わりにします
ホカホカのコーヒー豆の完成です
わたしの唯一の至福のひと時です
ケニアのコーヒーのフレーバーには良くも悪くもトマトのような青っぽさがあるんですが、
これがわたしは好きで、最近はまっているんです
一般的に焙煎時間が短いと酸味が強くなり、長いと苦みが強くなるといわれています
個人的には1ハゼが終わって少し落ち着いてきたタイミングがフレーバーのバランスが良くて好きです
そこから焙煎をさらに続けていると、2ハゼと言われる2回目の爆ぜがやってくるんですが、
ここまでくると苦みの強いコーヒーになってしまいます
ここでコーヒーの爆ぜは終わります
最高2回です
どんなに美味しいコーヒーでも、です
以上です」
取り調べ
こんな感じで犯人と名乗る男は語ります。
内容は僕が即興で書いた話なので、なにも仕掛けはありませんが、
雰囲気でも感じてほしくて一生懸命考えました。
何の脈絡もないように聞こえますが、実は重大な次の爆発のヒントが隠されていたりします。
こんな心理ゲームのような形で警察とのやり取りが繰り広げられ、時間すら忘れて読んでしまします。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
タイトルにある「自分の家で爆ぜた何か」とはコーヒー豆のことでした。
火傷や火事には注意ですが、爆弾よりははるかに安心安全です。
でも確実に読後僕の中で何かが爆発したような感覚はありました。
余韻と言っていいのかわかりませんが、
まさに茫然自失です。
冷蔵庫から牛乳を取り出そうとして、手が動かず扉を開けない感じです。
味わったことのない感覚だったのは間違いありません。
これだからミステリはやめられないなって改めて思いました。
悔しいのはこの感覚に2度目はないってことです。
2度読みすることはあっても、初見の時と同じ気持ちにはなれないのです。
コーヒー豆は2回も爆ぜるのに。
…
気になった方はぜひチェックしてみてくださいね。
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では、また。
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