※本記事には『週刊少年ジャンプ』2026年1号掲載のONE PIECE第1167話「イーダの息子」のネタバレが含まれます。未読の方はご注意ください。
書籍情報
- 作品名:ONE PIECE(ワンピース)
- 著者:尾田栄一郎
- 出版社:集英社
- 掲載誌:週刊少年ジャンプ 2026年1号
- 発売日:2025年12月1日(月)
- 最新巻:第113巻(2025年11月時点)
【ネタバレ注意】心温まる扉絵から始まった今週のワンピース
今週の『週刊少年ジャンプ』2026年1号に掲載されたONE PIECE第1167話「イーダの息子」。読者リクエストの扉絵は、思わずほっこりしてしまう心温まるシーンからスタートしました。
「本を泥棒しようとした猫を叱っているけど怒っていないゲンさんとノジコ」というリクエストに応えた扉絵では、「おさかな図かん」と表紙に描かれた本を手に入れたぞとひょこひょこ走って持って行く猫を、ゲンさんとノジコがしゃがんでにっこりと眺める姿が描かれています。「泥棒はいけないよ」と言葉では叱っても、その優しい表情からは怒れない気持ちが伝わってきて、読者の心をほっこりと温めてくれる一コマでした。
こうした何気ない日常の一コマが、この後に展開される重厚な物語とのコントラストとなり、ONE PIECEという作品の奥深さを感じさせてくれます。
世界政府の三段階契約システムが明らかに
今週最大の情報解禁となったのが、世界政府との契約に関する詳細です。五老星の口から語られた契約システムは、世界政府の支配構造の根幹に関わる重要な設定でした。
世界政府との契約には三段階が存在することが判明しました。最も浅い「浅海契約」から始まり、「深海契約」、そして最深部の「深々海契約」へと続きます。特に注目すべきは、深海契約以上になると、この世に13人しか存在しない本物の神々との契約が結ばれるという点です。この「13人の神」とは、おそらく世界政府の頂点に君臨するイム様との契約を指していると考えられます。
ハラルドは「神の従刃」として浅海契約を結び、その左腕には契約の証である刻印が刻まれました。この刻印は、かつてシャンクスの腕にも同様のものが確認されており、彼もまた世界政府と契約を結んでいたことを示唆しています。
五老星のナス寿郎聖はハラルドに対し、「いつの日か神の騎士の称号が与えられるかもしれない」と告げ、エルバフが世界政府の輪に加わる希望を持たせました。しかしこれは、巨人族最強の戦士を手駒とするための巧妙な策略だったのかもしれません。
神の騎士団の自由な行動と秘密保持
ガーリング聖からハラルドへ告げられた指示も興味深いものでした。「下界に行くのは自由だが、長距離用の電伝虫を持っていること。そしてここのことは決して何も話すな」という言葉からは、神の騎士団が意外にも行動の自由を持っていることが分かります。
必ずしもマリージョアに常駐する必要はなく、下界での活動が認められているということは、神の騎士団がより広範囲で世界政府の意志を実行する存在であることを示しています。ただし、その活動内容や組織の詳細については厳重な機密保持が求められており、世界政府の闇の部分を担う組織としての性格が浮き彫りになりました。
この時にハラルドが持たされた長距離用の電伝虫こそ、現在ロキが持っている雪電伝虫に繋がっている可能性が高いでしょう。エルバフには電語虫という独自の通話ツールがあるにもかかわらず、ロキが電伝虫を持っていたのは、父ハラルドから受け継いだものだったのかもしれません。
ハラルドとネプチューンの友情
エルバフの国王ハラルドと魚人島リュウグウ王国のネプチューン王との交流シーンは、今回の物語に温かみを加える重要な場面でした。
20年前、魚人島を訪れたハラルドは、ネプチューン王と親しく語り合います。王同士という立場の近さから、互いに悩みを打ち明けやすい関係性が築かれていたのでしょう。ネプチューンは娘が生まれることを予言されたと喜びを語り、「お前の息子の許嫁にしよう」などと冗談を飛ばします。さらに「その娘は手に負えぬ力を持って生まれてくるかもしれない」とも述べており、これは後に古代兵器ポセイドンの力を持つしらほし姫のことを指していたことが分かります。
ハラルドは「ウチの悪ガキとお前のモサモサした娘の未来に乾杯」と返し、ネプチューンが「モサモサせんわ」とツッコむ微笑ましいやり取りも描かれました。この「モサモサ」という呼び方が、現在ロキが電話している相手「モサ公」の正体がしらほし姫であることを示唆する重要な伏線となっています。
二人の王の友情は、種族を超えた絆の可能性を示すと同時に、後に訪れる悲劇をより際立たせる演出となっているのです。
サウロへの依頼とエルバフの学校
ハラルドはエルバフを訪れたサウロに対し、「自由にここに住んでくれ」と歓迎の意を示し、重要な相談を持ちかけます。それは、エルバフに学校を開いてほしいという依頼でした。
巨人族の国エルバフに教育機関を設立しようとするハラルドの姿勢からは、単なる武力だけでなく、知識と教育によって国を発展させようとする賢明な統治者としての一面が見えてきます。世界政府との契約を結びつつも、自国の文化と教育を大切にしようとするハラルドの苦悩と決意が感じられる場面でした。
フィッシャー・タイガーのマリージョア襲撃の真実
物語は15年前へと時を移します。奴隷解放の英雄として知られるフィッシャー・タイガーによるマリージョア襲撃事件。この歴史的事件に、実は神の騎士団のメンバーが関与していたという衝撃の事実が明らかになりました。
マリージョアに潜入したフィッシャー・タイガーは、神の騎士団の一人と遭遇します。しかし戦闘になるかと思われたその瞬間、すれ違いざまにこの人物はタイガーの手錠を切り、さらに「武器庫のカギを開けてある」と場所をひっそりと告げたのです。
この神の騎士団メンバーの正体は明示されていませんが、その後の展開から、若き日のシャンクスである可能性が極めて高いと考えられます。シャンクスが神の騎士団に所属していながら、世界政府に反する行動を取っていたという事実は、彼の複雑な立場と真の目的を示唆する重要な描写です。
シャンクスと神の従刃の複雑な関係
今回の描写で、シャンクスがかつて神の従刃のメンバーだったことが確定的となりました。15年前の彼は神の従刃の制服を身にまとい、左目には包帯を巻いた姿で登場しています。
特に注目すべきは、シャンクスの左腕に刻まれていた刻印です。これはハラルドが浅海契約で得た「神の従刃」の刻印と同じものであり、シャンクスもまた世界政府と契約を結んでいたことを示しています。しかし、フィッシャー・タイガーの奴隷解放を密かに手助けするという行動は、彼が心から世界政府に忠誠を誓っていたわけではないことを物語っています。
マリージョアでハラルドと再会したシャンクスは、ハラルドから「以前会ったことがあるような気がする」と言われます。おそらくハラルドはロジャー海賊団に乗っていたシャンクスを見かけたことがあったのでしょう。しかしシャンクスは自分の正体を隠すためか、演技をするかのようにハラルドを牽制します。
「全てが嫌いだった」というシャンクスの発言は、演技とも本心ともとれる非常に重要なシーンでした。ロジャーの船で過ごした日々を「嫌いだった」と言えるはずがないシャンクスが、あえてそう言う必要があった。世界政府への忠誠を演じながら、内心では別の目的を持って神の従刃に潜入していたことが窺えます。
シャンクスが神の従刃に所属しながらも、その内部で独自の正義を貫こうとしていた可能性が高まりました。そして後に近海の主に左腕を食われることで、その刻印もろとも失うことになります。あの出来事は単なる事故ではなく、何か理由があって自ら腕を差し出したのではないか、という考察も生まれてきます。
霧の海の怪物伝説の真相
今回、新たな伝説の起源が明らかになりました。世界政府から海賊退治の任務を命じられたハラルドは、濃い霧の中を漂流する海賊船を秘密裏に襲撃していたのです。
巨人族の圧倒的な戦闘力で海賊船を真っ二つにし、海軍を救出するハラルドの姿は、まさに霧の中に潜む怪物そのものでした。インペルダウンの囚人たちまでもが恐れるという噂が広まり、それが「霧の深い海に現れる巨大な怪物」という伝説へと発展していったのです。
モルガンズが人々から聞き込みをしている冒頭のシーンは、この伝説がどれほど広範囲に広まっていたかを示しています。しかしその正体は、世界政府の命令で動く一人の巨人王だったという真実は、ワンピース世界の歴史の裏側を垣間見せる重要な描写でした。
ハラルドは「巨人の誓い」の一環として、霧に紛れて海賊船を襲撃する任務を遂行していました。世界政府が秘密裏に処理したい海賊たちを始末することで、エルバフを世界政府の輪に入れようとしていたのです。
ロキとイーダの絆 – 今週最も感動的なシーン
エルバフでは、病気で弱っているイーダの姿が描かれます。そこへロキが酒場にやってきました。「他人者ババア」と言いながらも、倒した動物の肉を持ってきて「早く再開しろ」と言うロキの姿は、まさに可愛い思春期真っ只中の息子のようでした。なんだかんだ言いながらも、ロキはイーダのことが好きなのです。
イーダはロキの実母ではありません。ロキの生みの母であるエストリッダは、自分の産んだ子を崖から突き落とそうとするほどロキを憎んでいました。一方、ハイルディンの実母であるイーダは、血の繋がらないロキを本当の息子として愛情を注いできたのです。
そんなイーダに、エストリッダ一族が毒を盛ったという事実が明らかになります。正妻の座を奪われまいとする策略でした。このことを聞いたロキは激怒します。そして犯人たちをボキボキに倒し、こう叫びます。
「あいつだけがおれの、母親なんだぞ」
この叫びこそが、今週最大の感動シーンでした。素直になれない思春期の息子が、母への愛情を爆発させる瞬間。血の繋がりを超えた本当の親子の絆。イーダが注いできた愛情が、ロキの心にしっかりと届いていたことを示す、涙なしには読めない名場面でした。
尾田栄一郎先生は、ロキという一見悪役のようなキャラクターに、こんなにも深い人間性と感情を与えてくれました。12月最初の涙を誘う、本当に素晴らしいシーンだったと言えるでしょう。
ロキの復讐の始まり
イーダを毒殺した犯人たちがエストリッダ派の巨人族であり、醸造村の住人だったことが判明します。エストリッダの故郷である醸造村、通称「酒村」の人々が、イーダを排除しようとしたのです。
唯一自分を愛してくれた母を奪われたロキの怒りは、想像を絶するものでした。彼が後に酒村を焼き払った理由が、ここで明らかになります。それは単なる暴走ではなく、母への愛ゆえの復讐だったのです。
ロキの行動は決して許されるものではありませんが、その背景にある悲しみと怒りを知ることで、彼のキャラクターに深みが増します。「嫌われ者の王子」という評判の裏には、こんなにも切ない物語があったのです。
物語が示唆する今後の展開
今回明らかになった世界政府の三段階契約システムは、物語の核心に迫る重要な設定です。深海契約と深々海契約を結んだ13人の存在は、おそらく五老星と神の騎士団の最高幹部たちを指しているのでしょう。イム様から直接力を授かるという契約の実態は、彼らの不死性や特殊な能力とも関係している可能性が高いです。
シャンクスの過去についても、新たな謎が生まれました。神の従刃に所属していながら奴隷解放に手を貸すという矛盾した行動は、彼が世界政府の内部で何か大きな目的を持って動いていたことを示唆しています。「全てが嫌いだった」という発言の真意、そして左腕を失ったことで世界政府との契約からも解放された可能性など、今後の展開に期待が高まります。
ハラルドとネプチューンの友情、そしてモサ公の正体がしらほし姫である可能性など、過去編で明かされる情報は現代編の謎を解く重要な鍵となっています。ロキがしらほしと電話で話している相手が、父ハラルドの友人の娘だったという繋がりも見えてきました。
尾田栄一郎が描く壮大な伏線回収
今回の第1167話は、過去に描かれた様々な要素が繋がり始める重要な回となりました。霧の海の怪物伝説、フィッシャー・タイガーの奴隷解放、シャンクスの左腕、そして世界政府の支配構造。一見バラバラに見えた要素が、実は全て繋がっていたという事実に、改めて尾田栄一郎先生の構成力の高さを感じずにはいられません。
特に扉絵のほっこりとした日常シーンから、世界政府の闇、友情と裏切り、そして母子の愛と復讐へと至る重厚な展開への流れは、ONE PIECEという作品の持つ振り幅の広さを象徴しています。
ゲンさんとノジコが猫を優しく見守るシーンと、ロキがイーダを「おれの母親」と叫ぶシーン。どちらも「愛」を描いているという点で共通しています。尾田先生は、様々な形の愛を丁寧に描き分け、読者の心を揺さぶり続けているのです。
まとめ
『週刊少年ジャンプ』2026年1号掲載のONE PIECE第1167話「イーダの息子」は、世界政府の三段階契約システムという重要設定が明かされると同時に、ロキとイーダの感動的な母子の絆が描かれた神回でした。
浅海契約、深海契約、深々海契約という階層構造と、13人の神との契約という情報は、今後の展開に大きく関わってくるでしょう。シャンクスが神の従刃に所属していた過去や、フィッシャー・タイガーの奴隷解放への関与、霧の海に現れる怪物伝説の真相など、多くの謎が繋がり始めています。
そして何より、「あいつだけがおれの、母親なんだぞ」というロキの叫びは、血の繋がりを超えた本当の愛の形を示す、涙なしには読めない名シーンでした。素直になれない思春期の息子が、倒した肉を持ってくる可愛らしさと、母を守るために激怒する姿のギャップが、ロキというキャラクターに深い人間性を与えています。
ゲンさんとノジコの優しい笑顔で始まった今週号は、重厚な歴史の真実を明かしながらも、人と人との絆の大切さを描き続けるONE PIECEらしい一話となりました。来週の展開にも大いに期待が高まります。







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