MENU
カテゴリー

写真が暴く戦慄の真実:『いけないⅡ』レビュー

目次

はじめに

道尾秀介の「体験型ミステリ」第2弾『いけないⅡ』を読了しました。各章の最後に配された一枚の写真が物語を一変させる革新的な手法で話題となった前作の続編です。今回も前作を上回る衝撃と恐怖で、読後しばらく動けませんでした。累計55万部を突破している人気シリーズの魅力をレビューします。

基本情報

作品名:いけないⅡ(いけない2)
著者:道尾秀介
出版社:文藝春秋
単行本発売日:2022年9月22日
文庫版発売日:2025年6月4日
ジャンル:体験型ミステリ

作品の特徴

革新的な「体験型ミステリー」とは

『いけないⅡ』最大の特徴は、各章の最終ページに配された写真にあります。読者は物語を読み進めた後、提示された写真を見て隠された真相を推理する必要があります。この斬新な手法により、従来の小説の枠を超えた「体験型」の読書体験が可能になっています。

前作との関係性

前作『いけない』との物語上の直接的な繋がりはなく、どちらから読んでも楽しめる構成になっています。ただし、前作の存在があってこそ生まれた巧妙な仕掛けも施されており、既読者にはより深い楽しみが用意されています。

各章のあらすじ

第一章「明神の滝に祈ってはいけない」

高校生の桃花は、一年前に失踪した姉・緋里花のSNS裏アカウントを発見します。投稿内容から、姉が「てりべあ先生」というぬいぐるみと共に明神の滝へ願い事をしに行ったと推測し、手がかりを求めて現地へ向かいます。そこで出会ったのは、滝の伝説を知る謎めいた人物でした。

第二章「首なし男を助けてはいけない」

夏祭りの夜、少年は仲間と共に引きこもりの伯父を訪ねます。目的は、友人タニユウへの「どっきり」のため、伯父が作る奇妙な「首吊り人形」を借りることでした。30年近く自室に籠もり続ける伯父の協力を得て、肝試しでバケモノを出現させる計画を立てます。

第三章「その映像を調べてはいけない」

「息子を殺した」と自白する年老いた容疑者。暴力的な息子を刺殺し、遺体を橋から川に流したと証言しますが、肝心の遺体が見つかりません。隈島刑事は捜査の中で「決定的な映像」を発見しますが、それが刑事たちの運命を大きく変えることになります。

終章「祈りの声を繋いではいけない」

書き下ろしの終章では、これまでの物語がすべて繋がっていく驚愕の展開が待っています。前作を凌ぐといわれる衝撃のラストが、読者の予想を裏切ります。

私の読書体験

前作よりも最後の写真を見たときの真相がわからないことが多く、正直難しく感じました。それでも読者専用に解説サイトが設けられているので、真相はそこで確認することができます。

読者体験型ミステリーとだけあって、私は一章と二章の真相はかろうじて頭をこねくり回してたどり着くことができたのですが、その時の感動は今でも忘れられません。何度も何度も読み返しては最後の写真とにらめっこして「こういうことだったのか!」と気づいた瞬間の興奮。適度な疲労感と問題を解決したような快感は、ここでしか味わうことができない特別な読後感だと思いました。

残念なことに私の拙い脳みそでは他の章はいまいち理解できず、解説サイトのお世話になってしまいましたが、答えを知った後に再読すると「なるほど、ここに伏線があったのか」という新たな発見があり、二度楽しめる構成になっています。

読書の楽しみ方

推奨する読み方

  1. まず素直に物語を楽しむ:先入観なく、各章の物語をそのまま読み進める
  2. 写真をじっくり観察:各章末の写真に隠された違和感や手がかりを探す
  3. 推理と考察:写真から読み取れる情報を基に、隠された真相を推理する
  4. 再読で新発見:答えが分かった後に読み返すと、新たな発見や伏線に気づく

まとめ

『いけないⅡ』は、従来のミステリー小説の概念を打ち破る革新的な作品です。写真という視覚的要素を巧みに組み込んだ「体験型ミステリ」の手法は、読書体験に新たな次元をもたらします。

ミステリ好きもそうでない人にもぜひとも読んでもらいたい唯一無二の作品だと思います。まさに体験型エンタメの金字塔だと思います。道尾秀介さんの作品には何とも言えない気味の悪さのようなぞくぞくする感じがつきものですが、これも他では味わえない最高の体験だと思います。謎解き大好きな方にはぴったりだと思います。

前作『いけない』をお読みの方はもちろん、まだ読んでいない方でも十分に楽しめる構成になっています。ただし、どちらか一方を読んだ後は、もう一方も読みたくなること間違いなしです。

最後の一枚の写真が物語を一変させる瞬間の驚きと戦慄を、ぜひあなた自身で体験してみてください。きっと誰かにその感動を語りたくなるはずです。


※本記事はネタバレを避けて書いています。より詳しい考察や解説については、作品をお読みいただいた後に専門サイトをご覧ください。

前作の記事はこちら。

では、また。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次