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『恋に至る病』斜線堂有紀が描く衝撃のサスペンス恋愛小説【2025年映画化で話題】

目次

TikTokで200万再生!衝撃のサスペンス恋愛小説

「僕の恋人は、自ら手を下さず150人以上を自殺へ導いた殺人犯でした――」

この衝撃的なキャッチコピーで始まる斜線堂有紀さんの『恋に至る病』は、2020年3月の発売以来、SNSを中心に爆発的な話題を呼び、28回もの重版を重ねた注目作です。TikTokの書籍系アカウントで紹介された動画は再生回数200万回を突破し、多くの読者を震撼させました。

そして2025年10月24日、廣木隆一監督のもと、なにわ男子の長尾謙杜さんと山田杏奈さんのダブル主演で映画化され、さらに注目が集まっています。今回は、読めば読むほど解釈が分かれるこの衝撃作について、詳しくレビューしていきます。

『恋に至る病』基本情報

書名: 恋に至る病
著者: 斜線堂有紀
出版社: KADOKAWA
レーベル: メディアワークス文庫
発売日: 2020年3月25日
ページ数: 304ページ
価格: 770円(税込)
ISBN: 9784049130829

あらすじ:誰も予想できない純愛とサスペンスの融合

物語の主人公は、内気な男子高校生・宮嶺望(みやみねのぞむ)。彼には幼なじみで恋人の寄河景(よすがけい)という美少女がいます。景は誰からも好かれる明るく善良な女子高生でした。

しかし、やがて日本中を震撼させる自殺教唆ゲーム『青い蝶(ブルーモルフォ)』が発生します。150人以上を自殺へと導いたこの事件の主催者こそが、宮嶺の恋人である寄河景だったのです。

善良だったはずの彼女が、いかにして「化物」へと姿を変えていったのか。宮嶺は運命を狂わせた”最初の殺人”を回想し始めます。小学生時代のいじめ、加害者の不審死、そして変わりゆく景の姿。変化に気づきながらも愛することをやめられなかった宮嶺が辿り着く地獄とは一体何なのでしょうか。

「世界が君を赦さなくても、僕だけは君の味方だから」という宮嶺の言葉が、物語全体を貫く重いテーマとなっています。

斜線堂有紀という作家の魅力

著者の斜線堂有紀さんは、ミステリーと恋愛ジャンルを縦横無尽に横断する俊英作家として知られています。代表作『楽園とは探偵の不在なり』は第21回本格ミステリ大賞(小説部門)の候補となり、週刊文春ミステリーベスト10や「このミステリーがすごい!」にもランクイン。また『星が人を愛すことなかれ』では第4回本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞を受賞しています。

斜線堂さんの作品の特徴は、読者の予想を裏切る展開と、人間の心の闇を鋭く描く筆致にあります。『恋に至る病』でも、その才能が遺憾なく発揮されており、純愛とサスペンスという相反する要素を見事に融合させています。

「恋」なのか「狂気」なのか:読後に残る問い

この作品が多くの読者を引きつける最大の理由は、読み終わった後も答えが出ない「解釈の余地」にあります。寄河景という少女は本当に宮嶺を愛していたのでしょうか。それとも彼を自分の思い通りに操りたかっただけなのでしょうか。

作中で景は「ただ、私とみんなの快楽は違うみたいだけど」と語ります。彼女は殺すことに快楽を感じていたのか、それとも別の何かを求めていたのか。宮嶺に対する気持ちは純粋な恋心だったのか、それとも依存や執着だったのか。明確な答えは作中では示されません。

「どれだけ赦されざることをしたって、僕のスタンスは変わらなかった。人殺しのことを嫌いになれない人間はどうすればいいのだろう?」という宮嶺の独白は、読者にも重い問いを投げかけます。

タイトル『恋に至る病』の意味を考える

多くの読者が読了後に気づくのが、このタイトルの深さです。一見「死に至る病」のパロディのようにも思えますが、読み進めるうちに「恋に至る病」という言葉が持つ重層的な意味が見えてきます。

恋は人を盲目にし、正常な判断力を失わせる「病」のようなものです。宮嶺は景の変化に気づきながらも、彼女を愛し続けることをやめられませんでした。景もまた、宮嶺への感情によって何かが歪んでいったのかもしれません。

また、この物語では多くの人々が「恋」という感情によって死へと至ります。『青い蝶』という自殺教唆ゲームも、ある種の歪んだ愛や承認欲求が引き金となっているように描かれています。恋が人を幸福にするのではなく、破滅へと導く「病」となり得ることを、このタイトルは示唆しているのです。

ラスト4行が物語るもの

この作品で最も議論を呼ぶのが、ラスト4行の解釈です。ネタバレになるため詳細は控えますが、物語の結末部分には読者それぞれの解釈が分かれる余地が残されています。

景の本当の気持ちは何だったのか。宮嶺が最終的に辿り着いた場所はどこなのか。物語全体を通じて描かれてきたテーマが、この最後の数行に凝縮されています。一度読んだだけでは理解できず、何度も読み返したくなる不思議な魅力がここにあります。

2025年映画化で再び脚光を浴びる

2025年10月24日、本作は廣木隆一監督により映画化されました。監督は『月の満ち欠け』で第46回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞した実力派です。

主演を務めるのは、なにわ男子の長尾謙杜さんと山田杏奈さん。内気で不器用な宮嶺と、明るくカリスマ性のある景という対照的な二人を、どのように演じるのか注目が集まりました。映画はPG12指定となっており、原作の生々しい描写や衝撃的な内容をどこまで映像化しているのかも話題となっています。

また、主題歌はSaucy Dogが担当しており、切なくも美しい楽曲が物語の世界観をさらに深めています。

読者の評価:賛否両論が示す作品の深さ

読書メーターでの評価は68%、登録数は5000件を超えるなど、多くの読者に読まれている本作ですが、評価は大きく分かれています。

高評価の読者からは「最後まで目が離せない展開」「考えさせられる深いテーマ」「何度も読み返したくなる」という声が多く寄せられています。特に、恋愛の持つ純粋さと狂気を同時に描いた点が評価されています。

一方で、「生々しい描写が苦手」「登場人物の行動が理解できない」「後味が悪い」という意見もあります。確かに本作は、万人受けする作品ではありません。しかし、その賛否両論こそが、この作品が提示するテーマの難しさと深さを物語っているとも言えるでしょう。

『恋に至る病』を読む前に知っておきたいこと

本作を読む際には、いくつか心に留めておくべきポイントがあります。

まず、この作品には自殺や死に関する生々しい描写が含まれています。そうしたテーマに敏感な方は注意が必要です。また、登場人物の行動や心理が必ずしも理解しやすいものではないため、共感できないと感じる読者もいるでしょう。

しかし同時に、この作品は「愛とは何か」「善悪とは何か」という普遍的な問いを読者に投げかけます。明確な答えを求めるのではなく、自分なりの解釈を楽しむ姿勢で読むと、より深く作品世界に浸れるはずです。

一度読んだだけでは理解しきれない部分も多いため、気になる方は2周、3周と読み返すことをおすすめします。読むたびに新たな発見があり、解釈が変わっていく体験ができるでしょう。

関連作品:スピンオフ『病に至る恋』も登場

2025年9月には、スピンオフ短編集『病に至る恋』がメディアワークス文庫より刊行されました。本編では描かれなかった視点や、別の登場人物の物語が収録されており、本編を読んだ方にとってはさらに世界観を深められる内容となっています。

また、2025年6月からは少年エースplusで漫画版の連載も開始されています。漫画はおーうちさん、キャラクター原案はくっかさんが担当しており、視覚的に物語を楽しめるようになっています。

まとめ:読む者を選ぶ、だからこそ刺さる作品

斜線堂有紀さんの『恋に至る病』は、純愛とサスペンス、愛と狂気という相反する要素が融合した衝撃作です。150人を自殺へと導いた殺人犯が恋人だったらという極限的な設定のもと、人間の心の闇と愛の本質を描いています。

明確な答えを示さない結末、読むたびに解釈が変わる物語構造、そして読後に残る重い余韻。この作品は、読む者を選びます。しかし、だからこそ刺さる人には深く刺さり、忘れられない一冊となるでしょう。

「恋」という感情の持つ力と危うさ、人を救うこともあれば破滅へと導くこともある両義性を、これほどまでに鋭く描いた作品は稀です。映画化によって再び注目を集めている今、原作を手に取って、自分なりの解釈を見つけてみてはいかがでしょうか。

物語の最後に辿り着いたとき、あなたは宮嶺の選択をどう受け止めるでしょうか。そして、景の本当の気持ちをどう解釈するでしょうか。その答えは、読者一人ひとりの中にあるはずです。

こんな人におすすめ:

  • ミステリーと恋愛の両方が好きな方
  • 考察や解釈の余地がある作品が好きな方
  • 人間の心理の深い部分を描いた作品を読みたい方
  • 映画を観る前に原作を読んでおきたい方
  • 衝撃的な展開や後味の残る作品が好きな方

『恋に至る病』は、読み手の心に問いを残す作品です。あなたにとって、この物語はどんな意味を持つでしょうか。ぜひ実際に手に取って、その答えを見つけてみてください。

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