はじめに
児童書を卒業したら、読むべき本がわからない!そんな中高生のために、角川文庫がぜったいにまちがいないアンソロジー小説を作りました。2025年7月25日に発売された『ブラックボックス、誰が解く? 君に綴る4つの謎』は、ミステリ初心者にとって最高の入門書となる一冊です。
豪華執筆陣が織りなす4つの謎
本作の最大の魅力は、現代ミステリ界を代表する4人の作家によるオリジナル短編が収録されていることです。
相沢沙呼「屋上の雪融け」
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位を獲得した相沢沙呼。繊細な筆致で登場人物の心情を描くことで定評のある作家が、どのような「叙述トリック」を仕掛けてくるのか注目です。
青柳碧人「ヤンキー、ミステリと出会う ~俺とあいつと、さしすせそ」
密室ミステリーアンソロジー『密室大全』にも参加している青柳碧人による「フーダニット」(犯人当て)作品。タイトルからして興味をそそられる、一風変わった切り口のミステリーです。
秋木真「将棋部、無実を証明せよ」
「ハウダニット」(手口当て)を担当する秋木真の作品。将棋部という学校の部活動を舞台にした、青春要素も盛り込まれた謎解きが期待できます。
似鳥鶏「学生時代の母の原稿」
千葉大学教育学部卒業。北海道大学法科大学院在学中に小説家デビューした似鳥鶏による「ホワイダニット」(動機当て)作品。「叙述トリック短編集」でも読者を巧妙に騙してきた作家が、どのような仕掛けを用意しているのでしょうか。
ミステリーの楽しみ方を教えてくれる
「フーダニット」「ハウダニット」「ホワイダニット」「叙述トリック」とそれぞれのお題で人気作家4名に書き下ろしていただいた極上の短編に、どう読んだら楽しめるか?のヒントを添えてお届けします。
この本の特徴は、単に謎解き小説を集めただけでなく、それぞれのミステリーのタイプについて解説が付いていることです。初心者にとっては、ミステリーの基本的な分類や楽しみ方を学べる貴重な機会となります。
ミステリーの4つの基本形
- フーダニット(Who done it?): 犯人は誰?
- ハウダニット(How done it?): どうやって犯行を?
- ホワイダニット(Why done it?): なぜ犯行に及んだ?
- 叙述トリック: 読者の思い込みを利用したトリック
読みやすさも魅力
アンソロジーだから短い時間で読める、満足度100%の謎解き小説。272ページという手頃なボリュームで、4つの異なるタイプのミステリーを楽しめるのは、忙しい現代の読者にとって嬉しいポイントです。
各短編は独立しているため、気軽に手に取って読み始めることができ、通学時間や休憩時間にも最適です。
個人的な読後感想
実際に読んでみて、特に印象に残ったのは似鳥鶏さんの「学生時代の母の原稿」でした。この作品が本の最後を飾るトリにぴったりな作品だったのです。鳥だけに(笑)。
似鳥鶏さんの巧妙な仕掛けと、それまでの3作品を読んできた読者への最後のサプライズとして、まさに理想的な配置でした。アンソロジーの構成の妙も含めて、編集者の手腕が光る一冊だったと思います。
正直なところ、普段からミステリを読み慣れている身からすると、少し物足りない気もしました。しかし、それは本作が「初心者向け」という明確なターゲットを設定しているからこそ。ミステリのきっかけにはもってこいの一冊だと思います。複雑すぎない謎解きと親しみやすい文体で、ミステリーという世界への敷居を下げてくれる、まさに入門書として理想的な作品でした。
まとめ:ミステリーの世界への完璧な入り口
『ブラックボックス、誰が解く? 君に綴る4つの謎』は、まさにミステリの楽しみ方、教えます。はじめての文庫本におすすめ!というキャッチコピー通りの一冊です。
ミステリーに興味はあるけれど、どこから読み始めればいいかわからない。そんな悩みを抱える読者にとって、この本は理想的な入門書となるでしょう。実力派作家4人の競演により、ミステリーの多様性と面白さを一度に体験できる贅沢な構成となっています。
はじめてのミステリ小説は、ここからはじめよう!
基本情報
- 発売日:2025年7月25日
- 出版社:KADOKAWA
- レーベル:角川文庫
- 定価:814円(本体740円+税)
- ページ数:272ページ
- ISBN:9784041162866
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相沢沙呼さんの『medium 霊媒探偵城塚翡翠』です。
では、また。
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