「探偵小石は恋しない」、読み終えました。
正直に白状すると、読了してからすでに2週間ほど経ってしまっていまして、記事にするのをすっかり忘れていました……。あの読み終えた瞬間のリアルタイムな熱量をそのままお届けできないのが本当に悔しいのですが、当時の興奮や感情をできる限り思い出しながら、この本の面白さをお伝えできたらと思います。
僕は普段からミステリを中心にいろいろな本を読んでいるのですが、その中でも本作は、読み終えたあとの「うわ、やられた」という感覚が飛び抜けて強い一冊でした。先に結論だけ言わせてください。この本、めちゃくちゃ面白かったです。
書籍情報
| タイトル | 探偵小石は恋しない |
|---|---|
| 著者 | 森バジル |
| 出版社 | 小学館 |
| 発売日 | 2025年9月18日 |
| ページ数 | 328ページ |
| 版型 | 四六判 |
| 定価 | 1,870円(税込) |
| ISBN | 978-4-09-386763-4 |
著者の森バジルさんは、2023年に『ノウイットオール あなただけが知っている』で松本清張賞を受賞してデビューした、いま大注目の作家さんです。本作は「2026年本屋大賞」で第8位にランクインしたほか、各種ミステリランキングでも話題になるなど、各所で高く評価されている一冊でもあります。ちなみに単行本は、表紙が小石ちゃん、裏表紙が相棒の蓮杖さんという期間限定のリバーシブル仕様。こういう遊び心、僕は好きです。
どんなお話?
この本は、ある回想シーンから静かに幕を開けます。
主人公は、小石(こいし)ちゃんという、とっても可愛くて可愛くて可愛らしくて、やばいくらいに可愛い探偵さんです。彼女は日々たくさんの不倫調査をこなしながら、「いつか小説みたいな殺人事件の依頼が舞い込んでこないかなあ」とミステリ案件を待ち焦がれている。そんな、可愛い小石ちゃんをひたすら愛でまくるお話です。
……というのは半分嘘です。ごめんなさい。半分本当で、半分は僕の勝手なテンションでした。でも、小石ちゃんが可愛いというところだけは本当です。そこは譲れません。
さて、ここからが本作のキモなのですが、なんと小石ちゃんには特殊な能力があります。人間の恋愛感情が「矢印」として目に見えてしまうのです。たとえばカップルを見ると、お互いの胸のあたりから相手に向かって矢印が伸びて、ぐさっと刺さっている。その様子がはっきり見えてしまうそうなんですね。
だから、誰が誰に想いを寄せているのか、逆に「この人は今のところ誰にも恋していない」なんてことまで分かってしまう。小石ちゃんが不倫調査を“病的に得意”としているのも、この矢印の力があってこそ、というわけです。ざっくり言うと、こういうお話になっています。
※この記事は、ネタバレを避けて書いています。物語の「仕掛け」の核心には一切触れていませんので、未読の方も安心して読み進めてくださいね。ただ正直なところ、この本に関しては何の前情報もない状態で読むのが一番幸せだと思うので、「もう読むと決めている」という方は、そっとこのページを閉じて本屋さんへ向かうことを強くおすすめします。
不倫調査だけでも、ちゃんと面白い
ここまで読んで、「不倫調査がメインの話かあ、ちょっと地味そう」と思った方もいるかもしれません。でも、断言します。この本は、最後の大仕掛けまでたどり着かなくても、そこに至るまでの不倫調査のエピソードだけで十分すぎるほど面白いんです。
とにかく文章が読みやすくて、小石ちゃんと事務所の面々の掛け合いもテンポがよくて、ページがあっという間にめくれていきます。「気づいたら結構なところまで進んでいた」という、あの心地よい読書のスピード感があるんですよね。ミステリって、身構えると難しそうに感じてしまうこともありますが、本作はそのハードルがとても低い。普段あまり小説を読まないという方でも、するすると物語の中に入っていけると思います。
一つ一つの調査を、小石ちゃんが矢印の力を使ってどう解きほぐしていくのか。そのお手並みを眺めているだけでも、ちゃんと楽しい。この間口の広さが、本作のいいところだなと感じました。
そして、喫茶店で訪れた“あの瞬間”
僕がこの本を読み終えたのは、とある喫茶店でのことでした。
これがもし自宅だったなら、僕は間違いなく声に出して「はあー!」とか「おもろー!」とか叫んでいたと思います。だって、喫茶店で静かに本を読んでいるときに、まさかこんなトラップが仕掛けられているなんて、いったい誰が思うでしょうか。完全に油断していました。
実は、最終章の手前の時点で、すでに「ひっくり返るほどの仕掛け」が一発あったんです。その時点で僕は、「あと何回ひっくり返ることになるんだろう」と、半分わくわくしながら、半分おびえながらページをめくっていました。そして、ラストでまた……いや、これ以上は本当に言えません。言いたくてうずうずしていますが、ぐっとこらえます。
あの衝撃を何かに例えるなら――ここで急にマニアックな話になってしまって恐縮なのですが――『BLEACH』の零番隊、修多羅千手丸(しゅたら せんじゅまる)の卍解を初めて見たときの、あの感覚にとても近かったです。伝わる人にだけ伝わってくれたら嬉しいです。その場に座っていられなくなって、いてもたってもいられなくなって、「やべー」とか「うわー」とか、声に出して感情を吐き出さないと、自分の体がどうにかなってしまうんじゃないか。本当に、そのくらいの衝撃でした。
「探偵小石は恋しない」というタイトルが持つ意味も含めて、まさに「心せよ」という言葉がぴったりの読書体験です。これ以上はもう、何も言えません。
こんな人におすすめ
そんな本作を、僕はこんな方におすすめしたいです。
- 伏線がきれいに回収されていく物語が好きな人
- どんでん返しや、読者がまんまと騙される系のミステリが好きな人
- 普段はあまり小説を読まないけれど、何か一冊読んでみたい人
- 「騙されたい」という気持ちで本を開ける人
- 可愛い探偵に会いたい人(これは完全に僕のことです)
逆に、本格ミステリを読み慣れているという方にこそ、ぜひ一度挑んでみてほしい一冊でもあります。きっと、いい意味で振り回されるはずです。
読書のお供に、BGMはいかがですか
先ほど、僕がこの本を喫茶店で読んでいたという話をしましたが、本を読むときの「環境音」って、思っている以上に没入感を左右しますよね。静かすぎても落ち着かないし、うるさすぎても集中できない。あの喫茶店のちょうどいい空気感が、僕はけっこう好きなんです。
僕が運営しているYouTubeチャンネル「Silent Breeze」では、まさにそんな読書時間にぴったりの、カフェ風のBGMやピアノの音楽をお届けしています。お家にいながら喫茶店にいるような気分で本を読みたいとき、何かの作業に集中したいとき、よかったらそっと流してみてください。
「探偵小石は恋しない」を読むときも、読み返すときも、ぜひ一緒にどうぞ。
おわりに
「探偵小石は恋しない」、本当に、本当に面白かったです。リアルタイムの熱量をそのままお届けできなかったのは悔やまれますが、2週間が経ったいまでも、あのラストの衝撃はくっきりと思い出せます。それだけ強烈な読書体験だった、ということですね。
ネタバレを絶対にしたくないので、内容について触れられるのはこのくらいになってしまいますが、とにかく一人でも多くの方に、何の前情報もない、まっさらな状態で読んでほしい一冊です。
そして最後に、一つだけ告白させてください。
いま、僕の胸からはおそらく、小石ちゃんに向かって矢印がぐんぐん伸びているに違いありません。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。







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