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『ノルウェイの森』感想|放心からプリキュアで回復するまで

『ノルウェイの森』講談社文庫の上下巻。赤い上巻と緑の下巻
目次

書籍情報

書籍名ノルウェイの森(上)(下)
著者村上春樹
出版社講談社(講談社文庫)
ページ数上巻:304ページ/下巻:296ページ
発売日2004年9月14日(文庫改訂版)※単行本初版は1987年9月4日
定価各792円(税込)
ISBN上巻:978-4-06-274868-1/下巻:978-4-06-274869-8

※ページ数・価格は執筆時点の情報です。お手元の版によって異なる場合があります。

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あらすじ(ネタバレなし)

37歳になった「僕」は、ハンブルク空港に着陸した飛行機の中でビートルズの「ノルウェイの森」を耳にし、18年前の記憶に激しく揺さぶられます。

1969年、もうすぐ20歳になろうとしていた大学生の僕。親友の恋人だった直子、同じ学部で出会った緑。それぞれが抱える欠落と悲しみのなかで、僕は彼女たちと関わり、失い、それでも生きていきます。「限りない喪失と再生」を描いた、村上春樹の代表作にして究極の恋愛小説です。

【ネタバレ注意】
ここから先は物語の展開や結末に触れる内容が含まれます。未読の方はご注意ください。とはいえ、僕自身がうまく言葉にできていない部分も多いので、ふわっとした感想になるかもしれません……。

読み終わった直後、僕は動けなくなった

まず、正直に言います。読み終わった瞬間、ほんとうに心ここにあらずでした。

ほんのり頭痛がするような、体が放心状態というか、疲れのような。いつも他の本を読み終わったときにある「あー、よかったー!」という感じもなければ、「おもろー!」という感じもない。テンションが上がる瞬間はほぼなくて、むしろ読み進めるにつれて、じわじわと物語の世界観に飲み込まれていく。情緒を物語にコントロールされているような、そんな感覚でした。

読後感として残ったのは、たぶん「没入感」だけだったのかなと思います。それ以外の感情は、いまだにうまく言葉にできないものがたくさんあって、このレビューを書いている今も、正直まとまっていません。

とりあえず読み終わって少し余韻に浸ったあと、「このままじゃ動けなくてダメだ」と思って、キミとアイドルプリキュアの映画を観てキラッキランランになってきました。キュアアイドルのおかげで少しはマシになった。ほんとうに救われました。プリキュア、ありがとう。

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でも、ふとした瞬間に思い出すと、またあの辛くて苦しい感情がよみがえってくるんですよね。登場人物たちの顔が浮かんできて、「直子、なんでだよ」とか、「緑とはどうなったんだ」とか、「レイコさんは?」とか。そういう問いが、読み終わってからもずっと頭のなかをぐるぐるしています。

ClaudeにWA2っぽい小説を聞いたのがきっかけ

そもそも僕がこの本を読み始めたのは、Claude(AI)に「WHITE ALBUM2のような小説をいくつか紹介して」と頼んだ中に、この『ノルウェイの森』があったからです。

WA2をご存じの方なら、この時点で「あー……」ってなるかもしれません。あのゲームも、プレイ後にしばらく日常生活に支障が出るタイプの作品ですからね。

で、実際に読み終えてみて思ったのは、たしかに似ているところがあるな、ということです。ただそれは、ストーリーや設定が似ているという意味ではなくて、「記憶の残り方」の話です。

時間とともに、この本の記憶はきっと風化していきます。細かい展開や台詞は忘れていくでしょう。でも、またどこかでふと出会ったときに、一瞬でこの辛い気持ちを思い出せる。そういう確信があるんです。ビートルズの曲を聴いた37歳の「僕」がそうだったように。WA2もまさにそういう作品で、そこがいちばん似ている部分なのかなと思いました。

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村上春樹、僕にとっては二作目

村上春樹作品は、この前『夏帆』を読んだのが初めてでした。あのときは「なんとも言えない作品だなー」という感想で済んだんですよね。良いとか悪いとかではなく、ただ、なんとも言えない。

だから今回が僕にとって二作目なわけですが、まさかここまで心身にくる物語だとは思っていませんでした。同じ作者でも、これほど読後の身体感覚が違うのかと。

じゃあ胃薬が必要なほどかと言われると、それはちょっと違います。吐きもしなかったし、泣きもしなかった。でも、なんかじわじわと体の内側を蝕んでくるような感覚があるんです。一気にガツンとくるのではなく、静かに、ゆっくりと侵食してくるタイプの辛さ。これが村上春樹なのか、この作品だけなのか、僕にはまだわかりません。

暗くて深い森から、ようやっと帰ってきた

ビートルズの「ノルウェイの森」という曲を、僕は知りません。だから曲との関係で語ることはできないのですが、読み終わった今の気持ちを無理やり言葉にするなら、こんな感じです。

暗くて深い森に、ひとりで取り残されている。行方不明ではない。道しるべはちゃんとある。でも、そこから出るまでにものすごく時間がかかって、「今ようやっと帰ってこれたよ」って感じ?

……いや、なんか違うかもしれません。書いてみたけど、しっくりこない。それくらい、この本の読後感は言葉にしづらいんです。たぶん、読んだ人それぞれの「森」があるんだと思います。

ちゃんとエロかったのは救いだった

これは真面目な話なんですが、この作品、性描写がしっかりあります。セックスや一緒に寝るシーンの描写が、ごまかさずに書かれている。

で、これがあってくれたのが、僕にとってはまだ救いだったのかもしれません。あれだけ喪失と悲しみに満ちた物語のなかで、登場人物たちが生身の体を持って、体温を持って、確かにそこにいたという感触を残してくれる。それが読んでいる側の心を、ぎりぎりのところでつなぎとめてくれた気がします。

でも、それがあっても辛いものは辛い。そこは変わりません。

ハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか

これは僕にはよくわかりません。ミステリーばかり読んでいると、どうしても「結末は何だったのか」を確定させたくなるのですが、この本はそういう読み方を許してくれない感じがします。

辛いことはたしかにあった。それは間違いない。でも、何もかもがなくなったわけではない。僕はこれからいくらでも幸せなことはあると思っています。それが作者の意図と合っているのかは知りませんが、少なくとも読み終えた僕は、そう思うことにしました。そう思わないと、ちょっとやっていられないというのもありますが。

こんな人におすすめ

  • WHITE ALBUM2をプレイして、しばらく立ち直れなかった経験がある人
  • 「読後にスッキリする本」ではなく、「読後にしばらく引きずる本」を求めている人
  • 村上春樹を読んだことがなくて、代表作から入りたい人(ただし覚悟は必要です)
  • 喪失や悲しみを、きれいごとにせず正面から描いた恋愛小説を読みたい人

逆に、今メンタルが弱っている人や、読書で元気になりたい人には、タイミングを選んだほうがいいかもしれません。僕は読んだ直後にプリキュアが必要でした。

引きずる系つながりでは、以前レビューした新海誠『秒速5センチメートル』も、読後しばらく戻ってこられないタイプの作品です。

読書のおともに:Silent Breeze

僕が運営しているYouTubeチャンネル「Silent Breeze」では、カフェ風のフェルトピアノBGMを配信しています。

『ノルウェイの森』は、静かな夜にひとりでページをめくりたくなる本です。物語の重さを少しだけやわらげてくれる、やさしい音があると読みやすいかもしれません。読み終わったあとの放心状態のお供にも、どうぞ。

おわりに

結局、うまくまとまりませんでした。読んでいる方にはすでにバレていると思いますが、このレビューを書いている今も、まだ森の中にいる感じがしています。

でも、これだけは言えます。読み終わったあとにこんなふうになる本は、そう多くありません。心身にくる。じわじわくる。それでも、読んでよかったと思っています。

とにかく、みんな読んで。読んだら感想を教えてください。一緒に放心しましょう。

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